芸能界におけるメンタルヘルスケアの広がりを求めます

芸能界で働く全ての方に対するメンタルヘルスケアがより充実したものとなりますように

悩み苦しむひとにとっての逃げ場が自死しかないという状況をなくすために

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Aleksey KutsarによるPixabayからの画像

 

わたくしは三浦春馬さんが「お空に旅立たれた」後、彼の大ファンになった者です。ご存命中、彼のお名前とその佇(たたず)まいの美しさには一目置いておりましたが、それ以外は彼のことをほぼ何も存じ上げませんでした。

そんなわたくしがあのかたがお空に旅立たれた日の夜、膨大なウェブ上の記事などを一気に読み漁りまして。そして、彼が本当に誠実で心の優しい、真面目な、ものすごい努力家さんだったことを知りました。彼が俳優さんとして大変見目麗しいかたでいらしたことはここで改めて申し上げるまでもないことですが、とにかく彼は内面が本当に美しい。いや、内面「も」と言うべきか? とにかく、ひとりのおひととして心からご尊敬申し上げているのが春馬さん、なんです。それほどまでに彼は本当に素晴らしい、とても魅力的なかたでいらっしゃって。

 

春馬さんのファン(=「春友(はるとも)さん」と申します)の中には、あれほど未来を語り、理想の未来実現のために真摯に生きてらした春馬さんが、自ら、この世を旅立つことを選ばれるわけがない!! と今も強くおっしゃる方々がいらっしゃいます。でも、わたくしは、そうは思えないのですよね。

勿論、春馬さんは(そうした方々がおっしゃるように)いつも本当に理想の未来を語り、そのためのご努力をものすごくなさってこられたかたでした。でも、彼がインタビューで「少しでも休むと調子が悪くなる」的なことをおっしゃっておられたことを思うと、実はそうしてお仕事に没頭されることで、(春馬さんご自身が、たとえ一時的にでも)何らかのくるしみから逃れられていたのでは? などと思うのです。お仕事こそが彼にとっての生きる生命線であり、つらい現実から目をそらすことが出来る逃げ場でもあったのではないか? と。だって、晩年の彼のものすごい仕事量を見ると、どこかアンバランスなものを感じざるを得ない。春馬さんはそうして理想の未来にまい進することでーー、そう、ご自分をつねに鼓舞し続けることで、懸命に正気を保っておられたのではないか? と。でも、それがとうとう無理になって、あの日、あのとき、何かがぷつんと切れて、それであのような行為に至られたのではないか? わたくしはそう思うのです。ま、これはあくまでも、わたくしの勝手な想像に過ぎませんけれどね。

そう、何が言いたいかと言うとーーこれは、ひとつ前の記事深田恭子さんの復帰を心配したこととも繋がってくるのですがーー、芸能人の方って、お顔が広くおひとに知られていることもあるし、24時間つねに緊張状態でいらっしゃるんじゃないか? ということなんです。勿論、芸能人さんもひとりの人間だから、いつもがいつも「芸能人としてのご自分」でいられるわけではないと思います。でも、やはりどこに行っても人目があるし、気が休まるときというのは、わたくし達一般人から比べたら格段に少ないと思うのですよね。

以前、福山雅治さんー―福山さんは春馬さんの事務所の大先輩でいらっしゃいますーーが、お外でお手洗いに入られた際、ものすごく気を遣われて、綺麗に綺麗に使うように心がけている、といったようなことをお話しになっていらっしゃいました。福山さん曰く、「福山雅治さんが出られた後に入ったら、こんな状態(=悪い状態)だったよ」みたいなことを言われないために、細心の注意を払っておられるのだそうです。それってものすごくしんどいことだなぁ、と。芸能人さんには心休まるときって本当にごくごく限られたときと場所になってしまうんじゃないかな? そんなふうに思わざるを得ません。

普段からただでさえ激しい競争社会である芸能界、プライヴェートのときでさえ、つねに人目がある。芸能人のかたが、スタッフさんや普段から接しておられる関係者の方々との関係も、もしかしたら、一般的なビジネス界よりもさらにドライなものかもしれません。それに、例えばーー、ドラマや映画の現場というのは、ある一定期間は一緒だけれど、その作品が仕上がったら、もう解散、そしてまた次の現場、みたいな感じじゃないですか。長年会社に勤めて気心知れた同期が居て……という世界では決してない。そうするとやはりどうしても孤独に陥りがちだと思うし、そもそも、ただでさえ緊張状態が続く日常であろう、そこに何か悩みごとがあったとして、どなたか適切な相談相手っていらっしゃるんだろうか? そんなことを考え始めると、どんどん次から次へと、芸能の世界というものの過酷さ、厳しさを痛感してしまいます。

 

話は春馬さんに戻ってーー、わたくしは、春馬さんはもう本当に何かどうしようもない状況に陥られて、それで自らあのような選択をなさったのだと考えております。つまり、彼の場合、自らこの世を旅立つことでしか、もう逃げ場がなかったのでは? でも、もし、普段から芸能人の方々にとっての駆け込み寺的な相談機関があって(向こうの芸能人のかたは、例えば、なんらかの依存症を治すための専門機関などによく入られていますよね)、そして、一定期間そうしたところで専門的なケアを受けていらっしゃったなら、春馬さんのこともまた何か変わっていたのかもしれない、そんなふうに思います。

 

そう、芸能人のかたってただでさえ心の健康に関して非常にハイリスクなんですよね。業界全体としてもそうだし、お仕事のやり方的な部分においても、そう言えるし。それに、言ってみれば自分以外の皆がライバル、敵、みたいに思えてしまうところも多々あるのだろうし。前述のとおり、スタッフさんとの関係だって、ある意味、とても刹那的なものが多分に含まれているかもしれない。

心のケアをしたいと思っても、有名であることがネックになったりして、なかなか専門機関にかかれないかもしれない。というか、そもそもものすごくおいそがしいかた達なのだから、そんな時間の余裕なんて全くないのかもしれない。

 

「春友さん」達がよく今でも、春馬さんに逢いたい! とか、春馬さんが今もこの世に居てくださったら……!、とか、春馬さんがあのまま年を重ねてゆかれたら、きっとますます素晴らしい、それこそ日本を代表する、世界で活躍出来る俳優さんになってゆかれただろう……などとしょっちゅう tweet されているように、せっかくの才能を持つ御方であったとしても、突然この世から消えてしまわれたら、もう本当にどうしようもないわけなんです。ファンとしてはもうそれこそかなしみの極みですよ、本当に。

わたくし達が普段感じている以上に、実はエンターテインメントの業界というのは、わたくし達の日々の生活になくてはならないものです。それは今後テレビが廃(すた)れ、芸能人の方々が活躍されるフィールドが全く新しい何か別のものに移っていったとしても、それはおんなじだと思います。

わたくし達は普段から、例えば、歌手さんのお歌を聞き、歌い、ドラマや映画を観ては心に感動や、勇気、希望……などをいただいている。そう、わたくし達は普段から、芸能人の方々から素晴らしい「目には見えない贈り物」を沢山いただいているとわたくしは思うのです。そうした中で、今風に言うなら、所謂(いわゆる)「推し(おし)」のかたも出てくるわけですよね。

わたくしはお空に旅立たれてから春馬さんのファンになった者ですが、この年齢になって初めてここまで芸能人さんにハマりました。こんなことはこれまで生きて未だかつてなかったことです。春馬さんはもうお空の上にいらっしゃいますが、それでも、この一年、一体どれほどの力をわたくしに与えてくださったことか。まさしく、No HAURMA, No Life. です。

 

そんな、人生に活力を与えてくださる「推し」さんが突然消えてしまわれるだなんて、本当に本当にものすごくかなしいことです。そうした道を選ばざるを得ないほどに芸能界が大変な場所なら、もっともっとよりよい場所になってほしいです。だって本当にーー、たとえ一度も直接お目にかかったことがなくとも、それでも「推し」さんが居てくださる生活というのは、日々に鮮やかな彩(いろどり)を与え、沢山の喜びや楽しみ、幸せを与えてくれるものなのですから。そんな「推し」さん=大好きな芸能人さんが、何かに悩みくるしみ、どこにも逃げ場がなくなって、自らこの世から旅立たれるだなんて、もうそんなことは絶対あってはならないとわたくしは強く思います。

 

日本は、例えばーーアメリカに比べたらまだまだメンタルヘルスの意識も低いし(これでも随分改善されたとは思いますが)、「臭いものに蓋」という言葉に代表されるように、なぜか精神的な不調などを忌み嫌い、そうしたものをなかったものにしようとする風潮が未だに強いとわたくしは感じております。本当にまだまだ、です。心の健康の分野における、人々の常識というか、認識はまだまだ遅れている。

心は生もの、です。無理をすれば身体のどこかに不調が起こるように、目には見えないだけで、心だって調子が悪くなります。悲鳴を上げます。下手をすれば、生きる力さえ失いかねません。それほどまでに目には見えない心の領域は非常にセンシティブです。センシティブだからこそ、軽んじてはいけないんです。

 

芸能人さん以外でも、わたくし達一般人だって、いつなんどき心の健康を損なうかはわかりません。それはほんと、誰にもわからないんです。生きている限り、様々なことが起こるし、思いがけないアクシデントで心の健康状態が一気に悪化し、それこそ、それまでの日常が壊れることだって簡単にありえます。(思いがけない災難などで)

普通の社会で生きているわたくし達だってそうなのであれば、芸能の世界で生きていらっしゃる方々にとって、心の健康についてのリスクは更に高いものになります。だからこそ、芸能界には一般社会以上に手厚いメンタルヘルスケアの仕組みが必要だとわたくしは心から思うのです。

お休みなさりたいときはちゃんとお休みになれること。少しでも不調を感じられたなら、ちゃんとケアして差し上げられるような、業界全体における仕組みづくりが不可欠です。プロダクションさん同士もライバル、という非常に厳しい世界なのでしょうが、だからこそ、業界全体で心のケアについて協力していただいて、俳優さん、女優さん、歌手さん、タレントさん以外にも、スタッフのかたも安心してお仕事が出来るような、そんな業界づくりに是非取り組んでいただきたく願います。

 

※ こちらの記事  ↓  によれば、「12月1日には、日本俳優連合が芸能人向けの心の悩み相談窓口を設置しました。音楽業界よりも芸能関係の方が進展は早いかもしれません。」とありました。

 

 

ただでさえ皆さま非常にいそがしくしていらっしゃることかと思いますが。芸能人さんは、プロダクションさんからすれば「商品」なのでしょうが、その前に「ひとりのおひと」です。おひとを大切にしてこそ、よい産業が育ちます。よい産業は国力を高め、ひいては、人々の生活を豊かにします。(これは春馬さんがおっしゃっておられたことに繋がります!)

 

芸能界の方々はわたくし達に夢を与えてくださいます。そして、その夢はわたくし達の内面を豊かにしてくれます。それは結局まわりまわって、この国の人々の更なる幸福へと繋がるはずなのです。

日本の芸能界がよりよい場所になることを心から願って、つらつらと思うがままに書かせていただきました。最後までお読みくださいまして、ありがとうございます。